胃ろうについて

現在の日本は世界一の長寿国でありWHO(世界保健機関)の2019年の統計で男女合わせた日本人の平均寿命は84.3歳です。ご高齢であってもお元気で生活されている方がいる一方、様々な病気や認知症の進行で自分の身の回りの事を行えず自宅で介護が必要であったり、施設に入所する必要があったりする方も数多くおられることも事実です。そういった方の中には脳卒中後や加齢などにより嚥下機能が低下して十分にお口から栄養を摂ることができない方がみえます。口から栄養を取れなくなった時に十分に栄養を取る手段として、お腹の皮膚から直接胃に管を通してそこから栄養を注入する「胃ろう栄養」が広く一般的に普及しています。

胃ろうを造設するのは主に病院で行いますが、胃ろうのチューブは定期的に交換が必要で病院、クリニック、施設などで行われています。バンパータイプでは4~6か月に1回、バルンタイプでは1~2か月に1回の入れ替えが必要です。バンパータイプは交換の間隔が長い反面、素材がバルンタイプ比べてやや硬く、入れ替えの際に出血を起こしたり場合によっては瘻孔を傷つけて先端が腹腔内に露出することもあり、入れ替え後に胃カメラで先端位置を確認する必要があります。一方バルンタイプは交換間隔が短いのですが、入れ替えの際の抵抗が少なく出血を起こしたり瘻孔を壊すこともほとんどありません。胃ろう造設時はバンパータイプで行うことがほとんどですが、初回交換時にバルンタイプに変更して以降はバルンタイプでの交換が患者さんにとっては苦痛が少ないです。

本来はバルンタイプで入れ替えをするのが理想的と考えますが、胃ろうを作られているような患者さんは寝たきりの方が多く、特に施設に入所している方では頻回に病院に交換に来院することが困難でバンパータイプを選択される場合もあります。

そこで当クリニックでは胃ろうの管理に精通した医師が居宅や施設に直接訪問して胃ろうの状態の診察と交換を行うことで患者さんと介護者さんの負担を軽減することを目指していきます。交換時の胃ろうチューブの位置確認に関しては、病院では胃カメラを用いる方法か造影剤を注入してレントゲンで撮影する方法を行なっていますが、胃ろうチューブから特殊な細い内視鏡を挿入して確認する方法で患者さんの苦痛なく行うことができます。

また同時に胃ろうからの漏れや胃ろう部周囲の皮膚炎に対しても現在までの多くの胃ろう造設患者さんを診察してきた経験を活かしてさまざまなアドバイスを行うことが可能です。